若い時にはけっこう悪さをやった。 花田秀次郎くんが阿久津組に殴込みをかけたとき、助っ人
をした風間重吉はわしの極道ネームであった。
刑期をおえてまともな人間になろうとし、ボクシングを始めたこともあった。 阿波の種牛と呼
ばれていたわしは、阿波踊り見物にきていた若いアメリカ人と仲良くなって、すだっち焼酎を飲
みながらそいつに体験談を話してやった。 そいつは帰国したあとでわしをモデルにして、『ロ
ッキー』という映画をつくって有名になったそうである。 シルベスター・スタローンとかいう
若者であった。
イギリスに留学していた時には、学費をかせぐために英国情報部でアルバイトをしたこともあっ
た。 紹介してくれた前田さんはＭと呼ばれていた。 マネペニーという秘書がわしのことをな
んでかしらんが『ジェームズ』と色っぽい声でデートに誘って困っておった。 ある時、ソ連情
報部のタチアナという若い女と最新式暗号機を持ち出すためにイスタンブールまで行かされ、オ
リエント急行の中でスペクター組の殺し屋に命をねらわれ危機一発？なこともあった。 それで
もこの年まで生きながらえてこれたのも、怖いもの知らずの肝っ玉があったからだろう。
先日わしは久しぶりに友人と祭り見物にでかけた。 ごくごく普通の女子高校生２人が前から歩
いてきてすれちがいざまにこう言った。 『むかつく！』 わしと友人の２人はカール・ルイス
とベン・ジョンソンの対決なみのマッハ１５のスピードで、その場から一目散に逃げ去った！！
あぁ怖かったぁ〜〜！！
