『ブルース・リーの教え?』

その日、わしは末広大橋を渡り、草木もなびく北へ北へと愛車のロータス・ヒロッパを走らせていた。

東工業高校跡の交差点にさしかかった所で、信号が黄色に変わったので、ブレーキを踏んでスピードを落とした。
片側2車線の中央よりの車線であった。横断歩道に自転車をおして信号待ちしている女子高校生がいた。彼女は
ヘッドフォーンで音楽を聴きながらまっすぐに前の信号が青に変わるのを待っていた。わしのロータスが停止線
に止まるやいなや、青に変わった信号を信じて彼女は、自転車を押しながら前だけを見て横断歩道を歩きだした。

その時であった。黄色のうちに交差点を抜けようと、わしの後ろから、左側、歩道よりの車線を一台の車がスピ
ードをあげて突っ込んできた。女子高生はこっちを見ていないし、たぶん車の音も聞こえていない。危ない・・
・・自転車の前輪をかすめて、暴走車は走り去り、女子高生はその場に一瞬立ちすくんで、また何事もなかった
ように歩き出した。あと一歩先に進んでいたらたぶん大けがをして病院に運ばれていただろう。『私は信号を守
っていたのになんで?』と言いながら・・・・。

1973年の冬、23才のわしは、今はなき栄町のOSグランドという映画館でブルース・リー主演の『燃えよドラ
ゴン』を見た。ブルースの動きは、その後見たドラゴン映画よりもこの映画が一番すばらしかったが、わしがも
っとも印象に残ったシーンが冒頭にあった。模範試合のあと、弟子に稽古をつけ、最後にお互いが挨拶をする場
面である。お辞儀をする少年の頭をひっぱたいてブルースが言った!「礼をするときにも敵から目を離すな!」

さてさて、今の世の中は、ブレーキとアクセルをふみ間違う枯れ葉マークの高齢者や、こんなに言ってるのに酒
を飲んで運転するダメおやじや、携帯でメールを打ちながらの危険な若者ドライバーなどであふれておる。後ろ
はともかく、せめて前や横からつっこんでくるルールなき運転手の目は確認しておいた方がいいと思うわしなの
だが・・・アチョ〜〜っ!